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日本の肉文化と世界の違い|1200年の歴史が生んだ和牛という文化

「Yakiniku」「A5」。この言葉、海外でもそのまま通じるんです。

日本の肉文化がどうやって始まり、どうやって広まったか。そして世界でどう見られているか。それぞれの国にその国の肉文化があって面白いなと感じます。今回はそんな話をします。


「yakiniku」「A5」が世界語になっている

面白いなと思うのが、「yakiniku」「A5」という言葉がそのまま海外でも通じるということです。

A5という日本独自の格付けが、いつの間にか世界的な品質の代名詞になっていた。yakinikuという日本語がそのまま海外でも使われている。これは日本の肉文化が世界に本当に根付いた証拠だと思います。

では、なぜ日本の肉文化はここまで世界に認められるようになったのか。その答えは、意外にも「1200年間の空白」にあります。

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日本の肉食の歴史|1200年の空白

実は日本には、約1200年間も肉食を禁じた時代がありました。

675年、天武天皇が仏教の影響を受けて「牛・馬・犬・猿・鶏の肉を食べることなかれ」という肉食禁止令を発布しました。その後も繰り返し発令され、日本では公には肉食が禁止される時代が長く続きます。

ただ実際には、江戸時代に「薬食い」と称してこっそり食べる文化もありました。鹿肉を「紅葉」、猪肉を「牡丹」「山くじら」と呼ぶ隠語が生まれたのもその名残です。建前では禁止でも、人間の食への欲求は止まらなかったということですね。

明治時代になり西洋文化の流入とともに肉食が解禁されます。明治4年(1871年)に禁令が廃止され、明治5年(1872年)には明治天皇自ら牛肉を食べることで国民に肉食を推奨しました。その後、味噌や醤油で煮込む「牛鍋」が文明開化の象徴として大流行し、明治10年(1877年)には東京だけで牛鍋屋が488軒にもなったそうです。


1200年の空白が和牛を生んだ

この1200年という空白こそが、日本の肉文化を独自に進化させた背景です。

長い間、日本では牛は農耕や運搬に使う「役牛」でした。食べるための家畜ではなかったため、個体ごとの丁寧な管理が当たり前でした。この歴史の中で、筋繊維が細かく脂が入りやすい体質の牛が選ばれ続けた結果、現在の霜降り和牛の基盤が生まれました。

現在の和牛のルーツとして知られる但馬牛も、この長い歴史の中で兵庫県・但馬地方の厳しい自然環境と農耕文化の中で育まれてきた品種です。閉鎖された山間部で独自の血統が守られ続けたことが、現在の和牛の遺伝的な基盤となっています。

明治以降、肉食が解禁されると今度は美味しさを科学的・文化的に追求する方向へ一気に進化します。血統管理・飼育技術・肉質評価が体系化され、世界でも珍しいほど細かく品質がコントロールされるようになりました。これが和牛を世界的なブランドへと押し上げた理由です。

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それぞれの国の肉文化は、その国の肉の特性を活かしている

日本の肉文化が世界に認められた一方で、「日本の肉文化が正解」というわけではないとも感じています。

例えばローストビーフ。何度か和牛で作ろうと挑戦したことがあるのですが、ロウリーズのようなあの大きなサイズで和牛を使うと、どうしても重くなってしまう。あれはプライムリブ、つまり脂が少なく赤身が多いアメリカンビーフだからこそ成立する料理なんですよね。

実はBBQインストラクターの資格も持っているのですが、アメリカのBBQ文化は本当に素晴らしい。大きな塊肉をじっくりスモークで仕上げる、あのスタイルはアメリカの肉の特性があってこそです。豪快さもそうですが、最高の文化だと思います。

韓国の焼肉文化も然りで、本当に工夫が凝らされています。普通にカットしたら固さが出てしまうような部位も、漬けダレや切り方・焼き方の工夫で最高に美味しくしてしまう。ホルモンを最初に食べた人、誰だよ天才かよって仕込みながらいつも思うんですが(笑)、そういう知恵と工夫が文化を作ってきたんだと思います。

料理はその国の肉の特性に合わせて発展してきた。それぞれの肉にそれぞれの料理がある。当たり前のことなんですが、実際に作って失敗したりして初めてわかることって多いです。


高校生のときに食べたオーストラリアの肉

高校生のときにオーストラリアに行ったことがあって、そこで食べたオージービーフが固く感じたんです。当時は「なんか固いな」と思っていたんですが、今振り返るとあれは肉らしさを感じる文化だったんだと思います。

日本の肉文化は「柔らかいが正義」みたいになっていますよね。霜降り・口溶け・やわらかさ。でも肉の旨みを感じるなら、もも肉のように噛み締めたときに溢れ出る旨みが美味しかったりします。噛み締めた中に旨みがある。あの体験があったから、さまざまな肉の良さや文化も少しは理解できるようになったと思っています。

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柔らかさが正義ではない

どうしても「やわらかい=美味しい」という基準になりがちです。でもそれは肉の美味しさの全てではないと思っています。

噛むほどに旨みが出る肉の良さ、脂が少なくても食感で勝負する肉の良さ、その国の環境で育ったからこそ出る肉らしさ。それぞれに価値があります。

和牛を知れば知るほど、他の国の肉文化への敬意も生まれてくる。10年間焼肉屋をやってきて、そう感じています。


まとめ

日本の肉文化は、1200年という肉食禁止の歴史があったからこそ、ここまで独自に進化しました。役牛として丁寧に育てられてきた牛が、明治以降に一気に食の対象となり、血統・飼育・品質評価まで体系化された。その積み重ねが今の和牛文化であり、「yakiniku」「A5」が世界語になった理由です。

世界を見渡せばアメリカのBBQ・韓国の焼肉・オーストラリアの肉文化、南米の肉文化。それぞれに深い知恵と歴史があります。柔らかさが正義ではない。でも、だからこそ和牛の霜降りは特別なんだとも思っています。

肉を知ることは、その国の歴史と文化を知ることでもあります。


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店主兼料理長|食べログ百名店4年連続選出
東京広尾 お肉屋けいすけ三男坊
肉のカット・焼き・提供までを一貫して行い、
“人生最高の肉体験”をテーマにコースを構築。

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