牛タンの価格が上がり続ける理由|ミートショックと仕入れの現実を焼肉屋が解説
牛タンの価格が、止まりません。
当店をオープンした10年前と比べると、仕入れ値はかなり高騰しています。特に輸入牛タンの値上がりは凄まじく、焼肉屋として正直かなり厳しい状況が続いています。なぜここまで上がり続けているのか。現場目線で解説します。
そもそも牛タンはなぜ希少なのか
牛タンは、1頭につき1本しか取れません。他の部位(ロースやカルビ)は1頭から複数の塊が取れますが、タンだけは絶対に1本。どれだけ需要が高まっても、1頭から取れる量は変わりません。この構造的な希少性が、価格高騰の根本にあります。
輸入牛タンが直撃した理由

日本で消費される牛タンのほとんどは、米国・オーストラリアからの輸入品です。国産(和牛)のタンは流通量が少なく、価格も高いため、多くの飲食店が輸入牛タンを使っています。その輸入牛タンの価格が、2021年以降に急騰しました。
農畜産業振興機構のデータによると、米国産冷凍牛タンの卸売価格は2020年に1kg約1,626円でしたが、2022年1月には約2,698円まで上昇。わずか2年で約1.7倍になっています。
この価格高騰を「ミートショック」と呼びます。複数の原因が重なって起きた現象です。
ミートショックの原因
① 加工業者の人手不足・廃業
コロナ禍で米国・オーストラリアの食肉加工場が操業停止や規模縮小を余儀なくされました。人手不足により処理能力が低下し、供給量が大幅に減少。廃業してしまった加工業者も出ています。供給が減れば価格は上がる。これが第一の原因です。
② 中国の牛肉需要の爆発的拡大
中国の牛肉輸入量は2010年に約13万トンでしたが、2020年には約230万トンにまで急増しました。約18倍です。中国では牛肉を食べる文化が定着し、焼肉ブームも起きています。世界の市場で輸入牛肉の争奪戦が起き、日本は中国に「買い負け」する状況が続いています。
さらに深刻なのが、中国は「一頭買い」をすることです。日本のように部位ごとに注文するのではなく、牛1頭まるごと買う。コロナ禍で人手不足に悩む加工業者からすれば、細かい注文が多い日本より、一括で大量に買う中国を優先したくなります。この構造が日本への供給をさらに細らせました。
③ 円安・コスト全般の上昇
円安が輸入コストを押し上げています。さらに、輸送費・梱包資材・冷凍保管コストも上昇。納品時に使う真空パックの価格まで上がっています。食肉に直接関係ないコストも積み重なり、最終的な仕入れ値に影響しています。
和牛タンはどうなのか

和牛タンの値上がりは輸入に比べると比較的ゆるやかです。人件費・飼料・資材コストの上昇分が少しずつ価格に反映されている形です。ただし、輸入牛タンの高騰により代替需要が和牛タンに流れてきている面もあり、希少性はさらに上がっています。
焼肉屋としてどう向き合っているか
正直に言うと、この状況は焼肉屋にとって脅威です。
年々じわじわと上がっているのは実感していましたが、コロナ後から特に強く感じるようになりました。あまりにも和牛の価格が上がり続けると、メニューの見直しを迫られる日が来るかもしれません。そして輸入牛タンがこのまま高騰し続けると、いつか全国の焼肉屋から牛タンというメニューが消える日が来る可能性もある。それくらい深刻な状況だと思っています。
当店はコーススタイルなので、コース全体での見直しを続けています。どれだけ無駄をなくせるか。量や厚さを変えずに、どうやったらお客様が損をせず満足してもらえるか。その一点を大切に考えています。価格が上がっても、お客様に「来てよかった」と思ってもらえるコースであり続けることが、自分たちの仕事だと思っています。
自宅で牛タンを楽しむなら
価格が上がり続けている今だからこそ、本当に美味しい牛タンを選んでほしいと思います。通販で取り寄せるなら、産地・品質がはっきりしているものを選ぶのがおすすめです。
牛タン一本まるごと
利久の牛タン
まとめ

- 牛タンは1頭につき1本しか取れない。需要が増えても供給量は変わらない
- 輸入牛タンの卸売価格は2020〜2022年でおよそ1.7〜1.8倍に高騰
- ミートショックの主な原因は加工業者の人手不足・廃業と中国の需要爆発
- 中国の「一頭買い」により日本への供給がさらに細っている
- 円安・梱包資材・輸送コストの上昇も仕入れ値を押し上げている
- このまま高騰が続けば、焼肉屋から牛タンが消える日が来るかもしれない
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ふ
店主兼料理長|食べログ百名店4年連続選出
東京広尾 お肉屋けいすけ三男坊
肉のカット・焼き・提供までを一貫して行い、
“人生最高の肉体験”をテーマにコースを構築。
